日本では「猫は魚好き」というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、世界を見渡してみると、意外にも海外でそのイメージはあまり一般的とはいえないようです。

実際のところ、主に愛猫のご飯として栄養豊富なキャットフードを食べさせている場合は、生魚・焼魚などを与えることに不安を感じる方もいるはずです。この記事では、愛猫に食べさせてOK・NGな魚介類の種類について、魚を与える際の注意点に触れつつ解説します。
1.そもそも「猫は魚が好き」って本当? アニメなどの映像作品の中で、時折「猫が魚をくわえて走る様子」が描写されていることがあります。日本でも「魚=猫が好きな食べ物」というイメージが多くの人々の間で共有されており、そのような事情もあってか、国内で販売されている多くの猫缶の主原料も魚となっています。しかし、そもそも猫の祖先ともいわれるリビアヤマネコは、小型の哺乳類・鳥類・昆虫類などを食べて生活しているとされます。かつての日本でも、ネズミを退治するため猫の貸し借りが行われていたほどで、猫は必ずしも魚を食べる動物として認識されていたわけではありませんでした。日本で肉を食べるようになったのは、明治の文明開化以降とされており、それまで多くの日本人は主に動物性たんぱく質を魚から摂取していました。このことから、猫を飼っていた家が愛猫のご飯として日常的に魚を与えており、その歴史が現代にまで引き継がれたものと推察されます。もちろん、魚が好きかどうかは猫によって個体差があるため、飼い主は愛猫の好き嫌いを理解した上で魚を与えるようにしたいところです。 2.猫に食べさせて良い魚 猫に食べさせて問題がない魚は意外と少なく、魚なら何でも食べられるというわけではありません。一般的に食べられるものと考えられている魚であっても、猫によってはアレルギー反応などを引き起こす恐れがあるため、愛猫に食べさせる際はかかりつけの獣医師に相談した上で判断することをおすすめします。 まぐろ まぐろは豊富なたんぱく質とタウリンを含んでおり、猫が食べるのに向いている魚といえます。特に、猫は体内でタウリンを生成できないため、健康維持の観点からもおすすめできる魚です。 たら・たい・ひらめなどの白身魚 たら・たい・ひらめなどの白身魚は、総じて高たんぱく・低カロリーな魚のため、愛猫に食べさせても大量に与えない限りカロリー過多になるリスクは低いものと考えられます。白身魚はキャットフードの主原料として用いられることもあり、猫にとって安全な魚の一種といえるでしょう。 かつお(かつおぶし) かつおを愛猫に食べさせる場合、猫用に塩分が調整されたかつおぶしを選びましょう。かつおぶしにはたんぱく質・ビタミン・不飽和脂肪酸といった栄養素が含まれており、香りによる食欲増進も期待できます。 3.猫に食べさせてはいけない魚介類 人間にとっては美味しいイカやエビなどの刺身も、猫にとっては危険な食べ物になり得ます。次にご紹介する魚介類は、決して愛猫に食べさせないようにしましょう。 いか・たこ・えび・かになど よく「猫がいかを食べると腰を抜かす」などといわれますが、これは生のいかなどに含まれる「チアミナーゼ」という酵素によるものとされます。チアミナーゼには体内のチアミン(ビタミンB1)を分解する作用があるため、猫が生いかなどを食べるとチアミン欠乏症を引き起こす恐れがあります。チアミン欠乏症になった猫は、食欲低下や吐き気、重症の場合は動きがフラフラする症状がみられることもあるようです。よって、愛猫が興味を持つことがあっても、決して食べさせないようにしましょう。 あわび・さざえなどの貝類 あわびやさざえなどの貝類、特に貝類の内臓の部分は、猫が少量でも食べると「光線過敏症」を発症する恐れがあります。耳や顔、口の周りなどに炎症が起きたり、場合によっては腫瘍やただれを発症したりする可能性があるとされ、こちらも愛猫に与えるにはふさわしくない食べ物です。 いわし・さばなどの青魚 猫がいわし・さばなどの青魚を常食するようになると、黄色脂肪症(イエローファット)という病気の発症リスクが高まるとされます。黄色脂肪症を発症した猫は、食欲が減退したり、皮膚の下にしこりができたりする恐れがあるため、基本的には与えない方が無難でしょう。 4.猫に魚を与える際の注意点 愛猫に魚を与える際は、食べられる魚を与える以外にも、次のような点に注意が必要です。 鮮度が落ちた魚は与えない 鮮度が落ちた魚はヒスタミンが生成され、猫が食べるとヒスタミン中毒を起こす恐れがあります。一度生成されたヒスタミンは加熱してもなくならないため、愛猫には新鮮な魚を与えるようにしましょう。 できれば加熱して与える 生食用や刺身用の魚を猫に与えることは可能とされますが、寄生虫による食中毒の心配があるため、できれば加熱した魚を与えるようにしたいところです。また、塩分過多にならないよう、人間の料理と同じように味をつけないよう注意しましょう。 魚を主食として与えない 本来、愛猫に食べさせるご飯は、猫にとって必要な栄養素が配合されているキャットフードが望ましいところです。特定の魚だけを食べさせても栄養が偏ってしまうため、おやつ感覚で与えるようにしましょう。猫におやつとして魚を与える際の具体的な分量は、1日のカロリー量の20%とされます。しかし、以下の表の通り、愛猫の体重によって1日に必要なカロリー量は異なります。
体重 1日に必要なカロリー量 おやつ量の目安
1日に必要なカロリー量の20%
1kg 98kcal 19.6Kcal以下
2kg 182kcal 36.4Kcal以下
4kg 266kcal 53.2Kcal以下
6kg 350kcal 70.0Kcal以下
8kg 434kcal 86.8Kcal以下
※このカロリー値はあくまで目安です。(参考:小動物の臨床栄養学 第4版)
参考:https://www.ugpet.com/guide/cat/food/ingredient/calorie/calcまた、刺身1切れを10gとした場合、猫に与えられる主な魚のカロリーは次のように算出できます。
魚の種類 1切れ(10g)あたりのカロリー
まぐろ 11.5kcal
たい 10kcal
ひらめ 9.6kcal
※それぞれの魚につき、100gあたりのカロリーを10で割って算出
※参考:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年】
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10253_7 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10189_7 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10234_7仮に、たいの刺身を体重6kgの猫におやつとして与えるのであれば、7切れが上限となるでしょう。与える量について不安がある場合は、獣医師に相談して枚数を決めると安心です。 5.まとめ 猫が魚を食べること自体は、決してタブーではありません。しかし、食べた魚の種類によっては体調不良を引き起こすおそれがあるため、基本的には栄養バランスのとれたキャットフードを食べさせた方が安心です。また、すべての猫が生魚を好むとは限らないため、愛猫の好みや健康に配慮して焼魚を与えるなどの工夫も必要です。愛猫に魚を食べさせる際は、食べさせても健康を害するおそれがない魚を選び、おやつとして与えるようにしましょう。
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